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PTSD(心的外傷後ストレス障がい)

Doctor's File vol.364 岡本浩一院長 Doctor's File job MISUO net 新百合ヶ丘を中心とした地域情報
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心的外傷に対する反応

生命の危機に晒される、あるいは人としての尊厳が損なわれるような重大な出来事を体験した人は、誰しも何らかの精神的不調を呈するものです。眠れなくなったり、不安や恐怖心に囚われたり、神経過敏な状態になったり、イライラしやすくなったり、何かを信じることができなくなったり、色々な変化が現れます。ただ、それらの変化は大体3ヶ月間程度で自己治癒能力やその個人が持っている自己肯定感・信頼感、周囲のサポートにより自然と回復していくものです。

PTSDの症状

その回復が不十分にしかみられず以下に挙げるような所見を認める場合にはPTSDと診断されます。それらの所見とは、侵入症状と過覚醒、回避を指します。

  1. 侵入症状にはフラッシュバックに代表される外傷体験に係る反復的追体験と悪夢が存在し、心的外傷を象徴するきっかけにより強い苦痛を生じうる状態になります。
  2. 過覚醒には不安や睡眠障がい、怒りの爆発や混乱、集中困難、過度の警戒心や驚愕反応、などが存在します。
  3. 回避としては心的外傷の原因となった出来事、関連する事物に対する無意識的・意識的な回避行動や心的外傷体験の想起不能が存在します。

加えて重要な状態として麻痺というメカニズムが発動されます。強い衝撃を受けると精神機能はショック状態、過覚醒状態に陥ります。それに対する防衛手段として機能の一部を麻痺させることで一時的に現状に適応させようと試みるのです。それにより、感情鈍麻や感情萎縮、幸福感の喪失、興味・関心の減退、建設的な未来像の喪失、基底に存在する疲労感、等を生じることとなります。

トラウマ(心的外傷)

心的外傷は必ずしも天災や事故の遭遇等の一回の重大な出来事とは限りません。虐待、ネグレクト等の持続的な体験も含まれますし、必ずしも生命の危険を脅かされるような体験とは限りません。個人にとって強い苦痛を伴い上記症状を発生せしめるものであればトラウマとしてよいと考えます。また、大きなトラウマ(ビッグT)を負った人は小さなトラウマ(スモールT)に対する反応も過剰になる傾向にあるため、外傷体験が新たな外傷体験を生む土台ともなりうるのです。

PTSDによる人生の質の重大な低下

PTSDが厄介であるのは、その体験を共有しづらく恥として当人が一人で抱え込みやすいということ、自尊心や自己肯定感が著しく損なわれるということ、自分自身や他者を含む世界への信頼感を失墜させるということ、基本的安全保障感を揺るがすということ、感情や身体感覚のコントロール統合困難となるということ、などにより様々な精神機能を不全状態に至らしめることなのです。

臨床における実際

うつ病や不安障がい、依存症、などの他の精神疾患を多く併存することも重要な点です。日常臨床でも治療抵抗性のうつ病には心的外傷体験の存在が隠れていたということが比較的見られます。本来の心的外傷とは言い難いとしてもパワハラやセクハラ、いじめられ体験、などの出来事でも発生する可能性があるため注意が要ります。
治療には専門的なアプローチを要する場合が多くあります。以下のような専門的な治療対応が世界的に認められています。なお、薬物療法の効果は部分的なことが通常ですし、適応に当たっては慎重さが求められます。

  1. 認知行動療法(持続エクスポージャー療法)
  2. EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)
  3. 対人関係療法(役割の変化として扱う)

いずれの療法もそれらに精通した医師や臨床心理士による治療を求められます。EMDRは専門治療者として認定されたセラピストに受診する必要があるため、治療機関が限定されるのが現状です。また、対人関係療法については最近エビデンスが認められた療法であり、トラウマにより人生を大きく挫かれてしまった・その体験前後で分断されてしまった、という観点からアプローチしていきます。

最後に

ある出来事に対し強く持続的に囚われている、慢性的な自己不全感がある、人生に対する悲観や無力、希望の無さがある、などに該当する人は、専門医に相談することをお勧めします。

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